過払い請求が可能となる根拠は、不当利得の返還請求です。つまり法律的に根拠のない理由で得た利得を返してほしいという主張なのです。そして、この主張を唯一脅かし兼ねないものが貸金業法43条「みなし弁済」だったのです。
「みなし弁済」とは、一定の条件を備えた場合は、利息制限法の制限利息を超えた弁済も、法律上有効な支払いであったとみなすことです。グレーゾーン金利を適正(ホワイト)だとする規定です。
まず「みなし弁済」や「法定書面の妥当性」や「弁済の任意性」などについて理解を行い、判決の内容をより深く読み取る事によって、 「過払い請求」を取り巻く現在の状況を把握できるかと思います。やや難しい話になっているように思いますが、読み物と考え、目を通して もらえば十分だと思っています。
「みなし弁済」を簡単に説明すると、貸金業者が以下の5要件を全て守っている事を自ら立証し、どれか1つでも欠けると成立しません。
@業者が登録を受けている事
A業者が貸付を行う時、貸金業法17条に定める各記載事項を1枚の用紙にすべて記載した契約書を作成し、交付する事
B業者が弁済金(返済)を受ける時、貸金業法118条に定める受取証書を直ぐに交付していること。
C債務者が約定金利を利息として認識・理解して支払った事。(※ATMによる返金で、現金支払後に受取る控えによって初めて元金、 利息、損害金がの区別(各充当額)がわかる場合には、利息や損害金に充当される認識があったと認めることはできない)
D債務者が約定金利による利息を「任意に」支払ったこ事。(※脅迫や詐欺、そして錯誤に基づいての支払や強制執行による支払いは無効です。 財務省ガイドラインに違反する取立てによる支払いは無効。天引利息(先取利息)の支払いは任意とはいえない。さらに利息制限法を超える 利息は無効であることを知らずに支払った場合
=ほとんどの場合、これが当てはまる)
上記の内容も全てを詳細に記載する事はできませんので、要約していますが、かなり厳しい制限を設けられてると言っても過言ではありません。
立証義務は債権者(金融会社)側にありますので、物理上、大きな負担になる事は間違いありません。 続いて「法定書面の妥当性」を簡単に説明すると、今回の判決では契約時の書面(貸金業規制法17条)は特に問題にしていませんが、
返金受領時の書面(法18条)について、現在の記載方法の妥当性を否定しました。具体的には、貸金業規制法施行規則においては、法定事項である 「契約年月日」等に代えて「契約番号」の記載をすることが認められていますが、これは法の委任の範囲を超えた違法な規定であり、無効であるとの判決です。
最後に「弁済の任意性」を簡単に説明すると、貸金契約における「期限の利益喪失条項」は、利息制限法上限金利を超える部分については無効です。
しかしながら、本件の契約において期限の利益喪失条項は、債務者に対し、利息制限法の上限金利を超える部分も含め約定どおりに利息を支払わない限り、 期限の利益を喪失し、一括返済を求められるとの誤解を与え、結果として、債務者に対して、超過部分を支払うことを事実上強制した事になる。
以上の事から、上記のような誤解が生じなかったと言えるだけの特段の事情がない限り、弁済が任意であったとは言えない。
このような細かな事実を1つ1つ積み重ねた結果、債務者の立場を慮る判決が出たものだと思います。日本の裁判制度は、三審制をとっている為、一審の 地裁から事実を積み重ね、高裁、最高裁と進む中、債権者(金融会社)の(顧問)弁護士と熾烈な戦いを繰り返し、勝ち取った判決だと思います。
この歴史を考えれば、担当弁護士及び依頼者(債務者)が共に頑張った結果だと思います。この時点で、弁護士報酬の話は不謹慎かもしれませんが、 この歩みを考えれば、「過払い金」が戻ってから20%−30%の成功報酬は当たり前だと思います。ただ、他人によって引かれたレールの上を、 何の苦労もなく「受任通知」を郵送するだけで、安易に和解し「過払い金」の取戻しをする弁護士や(認定)司法書士は決して許される事ではないと思います。 「債務整理」は多重債務者が生活を再建する大切な機会であり、人の人生に関わる問題です。個人が、夫婦が、家族が新たに生活を取り戻す機会です。
担当する弁護士や(認定)司法書士は「金儲け(過払い返還請求)」を第一に考える事なく、依頼者(債務者)を見て、問題解決をして欲しいと切に願います。
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